カジノ反対 弁護士らがカジノ反対設立集会

「全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会」は4月12日、日司連ホール(東京都新宿区)において設立集会を開催。多重債務者の支援に取り組んできた弁護士や市民グループの関係者など約150名が全国各地から集まった。

設立集会では、設立趣意書、規約、役員の各議案を上程、決議。代表に新里宏二弁護士(宮城)、事務局長に吉田哲也弁護士(兵庫)を選出。カジノ法案の阻止と全国的な取り組みを訴える「集会宣言」を採択した。5月中旬に院内集会を開く(案)など、連携した活動を確認した。記念集会を行い、新里代表は「長年多重債務者の方々のために活動してきた。ギャンブルで借金を作り、家族や仕事を失う悲惨な人たちを見てきました。東京オリンピックに合わせ、カジノを開設しようというプログラム法案が提出された。経済さえよくなればよいのか、そんなことでは日本は二流国になる」と呼びかけた。大門実紀史参議院議員(日本共産党)、福島瑞穂参議院議員(社民党)、糸数慶子参議院議員(無所属)が来賓挨拶。前川清成参議院議員(民主党)、山下芳生参議院議員(日本共産党)から、各秘書が代理出席。市田忠義参議院議員(日本共産党・副委員長)、吉良よし子参議院議員(日本共産党)のメッセージを披露。

基調講演は、鳥畑与一教授(静岡大学・人文社会科学部経済学科)による「カジノは経済的繁栄をもたらすか」と題してアメリカの事例を通し説明。「カジノは経済の推進力にならない。確実に増えていく社会的コストについて、カジノ産業は負担しない。他者を犠牲に利益を得る掠奪的なビジネス」と示した。その後、ギャンブル依存症に苦しむ当事者、家族の体験報告。そして、若宮健氏(作家)、消費者団体、熱海、秋田、埼玉(パチンコの廃止を求める会)など各地の反対運動の意見交換をおこない、最後に「集会宣言」を採択。約3時間半の集会は、「断固闘うぞ!」と全員のシュプレヒコールで閉会した。

集会宣言
平成25年12月、国会に、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」案が提出された。この法案は、本来「賭博」罪として処罰の対象となるべきカジノ賭博について、一定の条件のもとに解禁することを推進するものであるが、我が国は、古来賭博を禁止してきた永い歴史をもっている。賭博が人や社会を破壊するというのは、私たちが先人たちから受け継いできた経験則であり、賭博の禁止は私たちが守り、次代に引き継ぐべき伝統である。カジノ賭博場は、同法案自身がいみじくも指摘するとおり、「依存症」の蔓延、「犯罪」の助長、「治安」の悪化、「青少年の健全育成」への悪影響といった諸問題を生じさせる。とりわけ、我が国には、既に560万人(注)とも言われるギャンブル依存症の患者が存在し、ギャンブル依存症の問題は実に深刻である。ギャンブル依存症は慢性、進行性の疾患であり、完治することはなく、放置すれば死(自死)に至るという重篤な症状をきたす。また、カジノ賭博場の設置は、窃盗、強盗、殺人、放火などの犯罪の多発をもたらすことになる。

カジノ賭博は、治安維持費、犯罪による被害額、犯罪者の刑事処遇費、依存症患者の治療費、ギャンブルから青少年を遠ざけるための特別な教育費など、社会政策上のコストを増大させるものであるし、また、負ける人たちの存在を前提とする経済政策が健全であるはずがない。カジノ賭博場を設置するのかどうかは「まちづくり」の問題である。私たちは、次代を担う子どもたちの賭博に対する抵抗心を低下させ、また、負ける人たちの存在を前提とする「まちづくり」を断固拒否する。

私たちは、全国各地に広がるカジノ賭博場設置に反対する人々と広範に連携して、日本中のどこにもカジノ賭博場を設置させないための全国的な取組みをおこなうことを呼びかけるものである。
平成26年4月12日
全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会設立記念集会参加者一同

(*)560万人/2008年の厚労省による調査によると、日本の成人男性9.6%、成人女性1.6%がギャンブル依存症患者。人口換算すると、その数は560万人にも及ぶという推計数値。なお、このデータは、「わが国における飲酒の実態ならびに飲酒に関連する生活習慣病、公衆衛生上の諸問題とその対策に関する総合的研究」(Report・厚生労働省)において、アルコール、タバコ、ギャンブル、インターネットという4種類の依存・嗜好の頻度と相互関係について、「ギャンブル依存は男9.6%、女1.6%」という記述から推計しているものと思われる。