IR関連 和歌山県がIRシンポジウム

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を目指す和歌山県は5月19日、ダイワロイネットホテル和歌山(和歌山県和歌山市)において、統合型リゾート(IR)シンポジウムを開催し約250名余が参加した。

仁坂吉伸知事は冒頭挨拶において、「地域の発展を考えると変わっていかなければならない」と訴えた。国会では、IR実施法案が提出されるまでになり、いよいよ現実味を帯びている段階。IR推進について県民総意のもとで考え、判断していきたいと開催意義を述べた。当初は、日本人のカジノ施設入場を制限する意向だったが、今回、県独自の規制を事業者に課し、クリアできれば日本人の入場を認める方向で説明。基本構想によると、和歌山県は使用金額の上限を設定する「IRカード」の導入(検討中)や、ギャンブル依存症対策について独自の規制策を打ち出す構想。「和歌山県IR基本構想」では、和歌山港に位置する人工島・和歌山マリーナシティ20.5haのエリアに、カジノ、2500室以上の客室を有する5つ星ホテル、5万㎡以上の国際会議場・展示場施設を含めたリゾート型観光施設を設置する構想。投資額は2799億円、投資回収年数は8.7年と見込む。またカジノ納付金予想は、カジノ売上1401億円として納付金210億円を見込む。入場料では、231.1万人(日本人112.7万人)を想定し、34億円を見込んでいる。

シンポジウムでは、政治解説者(評論家)の篠原文也氏による「IRにおける国の動向と地方型IRの必要性」を基調講演。篠原氏は、特定複合観光施設区域整備推進会議8委員の一人で、IRの和歌山モデルについて期待した。後半には「IR導入におけるメリットの最大化とデメリットの最小化」と題してパネルディスカッションを行った。モデレータを仁坂知事が務め、パネリストには、桐山満啓氏(レジャー産業・温泉・飲食等の新店開発や再建に携わる(株)Green Hills JAPAN代表取締役)、小池隆由氏(情報メディア・カジノIRジャパン運営)、田中紀子氏(ギャンブル依存症問題を考える会代表)、西平都紀子氏(地元企業家・(株)信濃路・社長)により、IR和歌山モデルへの意見を求めた。

依存症の専門家として紹介された田中氏は、国の依存症対策はほとんど無駄と一蹴。「唯一有効と思えるのは自己・家族申告対応。マイナンバーに頼るよりもパスポート、免許証が望ましい。それをギャンブル等(公営競技、パチンコ)にも課すべき」と力説。「IRだけ規制を強化してもダメ。私たちはカジノ禁止を主張していない(大豆アレルギーがあるから、大豆輸入を禁止しろというわけでない)。海外オペレータの声には、規制が強すぎると投資額を減らそうという意見がでているそうだが、そうではなく、投資額が増えるよう規制を下げるべき。手付かずだったギャンブル依存症対策に積極的に手厚い対策をして欲しい。個人的には、カジノ候補地として和歌山は不合格。和歌山県はギャンブル依存症のケアやボランティアが著しく不足している。和歌山を助けるために大阪・岸和田の仲間たちが手助けしている現状。IRを打ち出す自治体は、こうした自助団体に助成金を出していない。大切なのは依存症の手当てする財源をしっかりして、私たちの意見をくみ上げて欲しい」と述べた。仁坂知事は、「こんな田中さんのような方を呼べるのは和歌山くらいだと思います。パチンコの依存症についてもしっかりしないといけない」と答えていた。カジノ(IR)専門家の桐山氏は、海外ではギャンブル依存症に対して、企業(事業者)としてどう責任を持って対応していくかが主流と、フィリピンの事例を紹介。一方で、世界のカジノオペレータはパチンコを疑問視している。装置産業、あるいは時間消費型レジャーと言っているが、風営法はつけ刃的な法律で、なんら変わっていないと指摘。カジノ法制化によってきちんと規制できると、日本のギャンブル全てについて総合的な対策をしていく事が望ましいとした。地元代表の企業家・西平氏は、「若い人がいっぱい和歌山に帰ってくれれば活性化すると思う」と寛容な意見。田中氏は、「地域の活性化の一つとしてギャンブル依存症のネットワークを作ってほしい」と提起。小池氏は、「IR施設を油田開発に見立てると、日本で3社だけ採掘権が与えられる。その油田の収益で、地元を潤す事が大事であり、まさにまちづくり事業。和歌山IR開発事業株式会社を設立させて欲しい」と期待した。仁坂知事は、「和歌山にIRを作る時、県内企業がチャレンジでき、参加できるようなものにしていきたい」と述べ、RFI実施を呼びかけた。

IR導入にあたって、国際競争力の高い観光資源、マリンレジャーをはじめとしたアクティビティの多様さを活かしたリゾート型IRの構想を検討している。その実現可能性の高い基本構想を策定するため、県内民間事業者に幅広くアイデアを募集する「投資意向調査」(Repuest For Information)を実施するというもの。5月下旬にRFI実施を公表、6月上旬に説明会、募集を開始。8月下旬提案募集を締め切る日程となっている。