全日遊連 松下和彦保安課長が講話

全日本遊技事業協同組合連合会(阿部恭久理事長)は1月20日、第一ホテル東京(都内港区)において新年定例理事会を開催。午後3時から松下和彦保安課長が講話した。

 ただいま御紹介にあずかりました警察庁保安課長の松下でございます。
 皆様方には、平素から警察行政の各般にわたり深い御理解と御協力を賜っており、この場をお借りして御礼申し上げます。本年も引き続きよろしくお願いいたします。

 昨年来、ロシアによるウクライナ侵攻、一時期急速に進行した円安の影響等もあり、エネルギー価格を始めとする物価の高騰が続き、業界としても少なからず影響を受けているものと思います。また、コロナ禍における様々な制約が緩和され、徐々に平時に近い社会経済活動が可能となってきている中で、コロナの影響による国民の生活スタイルの変化、とりわけ、感染による死者数が過去最高水準となっている今現在もその傾向が出ていると思いますが、できる限り感染を回避したい高齢の方々の日常行動の変化等により、ぱちんこ離れが続いていると承知しており、業界としては苦しい状況が続いているものと思います。
 一方で、昨年11月にはスマートパチスロが導入され、本年にはスマートぱちんこの導入が予定されるなど、感染症対策の観点からも国民のニーズに合致した新たな遊技環境がスタートしたということで、業界として将来への期待につながる明るい話題も出始めているものと思います。本年が皆様にとって良い1年となることを祈念しています。

 さて、本日は折角の機会ですので、ぱちんこ営業の健全化に関連して、何点かお話させていただきます。
 まず、広告・宣伝の在り方についてです。
 広告・宣伝規制の扱いに関しては、昨年から、ホール4団体による広告・宣伝ワーキングチームと意見交換を重ね、検討を進めています。風営適正化法等に違反する態様の広告・宣伝が認められないことは従来と変わりませんが、これまで様々な事情から生じていた地域差をできる限り解消するとともに、他業種では行われているような一般的な広告・宣伝ができなくなることのないようにしたいと考えています。
 その上で、広告・宣伝の在り方について一言申し上げますと、業界においては従来より新規顧客の獲得や休眠顧客の掘り起こしといった目標を掲げられていますが、業界における広告・宣伝の在り方がこうした目標に沿ったものになっているのか、という観点が必要ではないかと思います。すなわち、仮にそのような観点を考慮せず、各ホールが一部のヘビーユーザー等をターゲットにした隠語等を用いた脱法的な広告・宣伝の競争に走ってしまえば、そもそものめり込み・依存防止対策の観点から問題となりますし、既存顧客という決まった大きさのパイを業界内で奪い合うという結果にしかならないのではないかと思う次第です。このような状況にならないためにも、業界内での取組を進めていく必要があると思います。また、広告・宣伝の内容は業界に対する世間のイメージにも大きく影響するものと思いますので、皆様には、業界にとって中長期的に何がプラスとなるのかという観点から、取組を進めていただきたいと考えています。
 警察としては、こうした業界の取組を踏まえながら、あるいはこれを補完する形で対応していきたいと考えていますので、業界においては、貴連合会が中心となって、広告・宣伝についても健全化に向けた取組を推進され、業界として良い方向に向かっていただくことを期待しています。

 次に、ぱちんこへののめり込み・依存防止対策についてです。
 昨年3月、ギャンブル等依存症対策推進基本計画の変更が閣議決定されました。その中で、業界については、変更前の基本計画に盛り込まれた各種取組を着実に実施し、所期の目標を達成したとの評価がなされています。まず、これまでの取組に敬意を表したいと思います。その上で、今後は、これまでの取組の継続を前提としつつ、更に改善・深化させていくことが求められています。
 具体的に申し上げれば、アクセス制限に関する取組として、自己申告・家族申告プログラムの導入を進めていただいています。貴連合会においては、各県遊協単位で未導入ホールに対する働き掛けを行うなどの取組を推進されており、導入ホール数は着実に増加していると承知しています。今後は、引き続き働き掛けを行うことで同プログラムが全てのホールに導入されることを目指していくとともに、周知・広報や手続の負担軽減を進めることでプログラムを必要とする方が利用しやすい環境を構築することが求められてくると思います。
 また、のめり込み・依存防止対策を進める上では、精神保健福祉センターや依存症専門医療機関をはじめとする関係機関との連携・協力が非常に重要となります。変更後の基本計画においても「地域連携の強化」が新しく盛り込まれています。地域連携の場として関係機関による協議会等が設置されている場合は、積極的に参画することにより連携を深めていただくようお願いします。また、一部の県遊協やホール企業で行われているように、関係機関を巻き込み、のめり込み・依存防止対策のためのセミナーを開催することも大変良い取組であると考えています。今後、貴連合会をはじめとする業界全体で、他機関と連携した包括的な取組が広がることを期待しています。
 のめり込み・依存防止対策は社会的関心が非常に高く、業界における取組の実施に当たっては、国民からどう見られているかという視点が欠かせません。とりわけ、ぱちんこへののめり込み・依存で困っている方やその御家族の視点は重要になると思います。もちろんそうした方はお客の一部かもしれませんが、その声に耳を傾け、真摯に寄り添う、これができるのは業界の中でもホールの皆様方だけであります。のめり込み・依存により生活が破綻してしまったといった事例が発生し、報道されることによって、業界としては大きなダメージを受けることになるため、のめり込み・依存により不幸な状況に陥る方が一人でも少なくなるよう、各種取組を着実に進めていただきたいと思います。皆様には、のめり込み・依存防止対策は、中長期的には業界にとってプラスになる、という心持ちで、引き続き、業界全体で取り組んでいかれることを期待しています。

 次に、ぱちんこ営業に絡む違法な事犯についてです。
 遊技機の不正改造事犯や賞品買取事犯について、昨年も検挙された事例がありました。これらの事犯は、型式試験による射幸性の適正管理を侵害する事犯であり、また、賭博との一線を画す上で根幹となる規制に違反する事犯であり、警察として厳正に対処する方針に変わりはありませんが、業界として、こうした違法行為が発生しないよう、様々な取組を継続してくことが重要と考えています。貴連合会においては、引き続き、全国の組合員に正しい知識の浸透を図るとともに、業界をリードして不正の排除に尽力されることを期待しています。
 この点、遊技産業健全化推進機構の活動は、不正の排除に大きな役割を担っていただいてます。具体的には、無通告で随時ホールへの立入りを行うことで営業者の緊張感を保たせるとともに、不正改造の疑いがあれば都道府県警察に通報するなどの取組を通じ、業界からの不正排除を図っています。警察としては、今後も機構と連携しつつ、健全化のための取組を推進していきたいと考えていますので、引き続き、業界全体で機構の活動への協力・支援をお願いします。

 次に、撤去済み遊技機の廃棄処理問題についてです。
 経過措置期間が満了した旧規則機については、営業所から撤去された後、倉庫等に保管された状態になっているものが一定数あると聞いています。不正な廃棄処理に対する世間の目が厳しくなっている中、仮に旧規則機が不適正に処理されるという事態が起こり、世間に明らかになれば、業界として大きなダメージを受けることになります。各ホールにおいて、保管している旧規則機の台数を確実に把握し、適正な廃棄処理が行われるよう、引き続き業界としての取組をお願いします。

 業界においては、地方自治体や地域社会と連携して、多岐にわたる社会貢献活動をされていると承知しています。例えば、ホールの防災拠点化や防災備品の備蓄等の取組は、近年激甚化・頻発化している自然災害への備えとして非常に重要なものであり、地域社会の安全・安心につながるものであります。こうした取組は、業界に対する世間のイメージの向上にも資すると考えています。引き続き、関係機関等との連携も図りつつ、さらにはESGの観点にも配意しながら、多様な社会貢献活動を推進されることを期待しています。

 また、コロナ対策をはじめ、電力ひっ迫に伴う節電対策、マイナンバーカードの取得促進、消費税インボイス制度の登録促進等、政府からの様々なお願いについても真摯に受け止め、対応していただいていることに対し、この場をお借りて感謝申し上げます。

 先ほど来いくつか申し上げてきましたが、貴連合会では、ぱちんこ営業の健全化に向け、あるいは、時代の変化に即したぱちんこ営業のあるべき姿等について、日々様々な議論を交わしていることと思います。想像するに、各組合員には様々な御意見がある中、業界として同じ方向を向くため複雑な思いで議論に参加されている方もいらっしゃるのだろうと思います。その中で、一部の方々が健全化の旗印を降ろしてしまえば、業界としてのまとまりが失われ、業界全体の健全化に向けた取組が後退し、業界全体にとっても、個々の組合員にとっても、良い結果が生まれるとは思いません。是非、中長期的な視点をもちつつ、業界が一つにまとまり、全体として良い方向に向かっていただくことを切に期待する次第です。警察としては、今後とも、業界の意見や要望に真摯に耳を傾けながら、業界の健全化に向けた取組についてしっかりと支援をしていきたいと思います。

 結びに、貴連合会の益々の御発展と皆様方の御健勝、御多幸を祈念いたしまして、私の話を終わります。御清聴ありがとうございました。