警察庁 PDCAサイクルにより計画的な依存防止対策の推進を要請

一般社団法人 日本遊技産業経営者同友会(東野昌一代表理事)は10月15日、グランドアーク半蔵門において、創立25周年祝賀会を開催。途中、午後4時45分に山田好孝課長が来場し、講話(約20分間)が行われた。内容は、6月18日に日遊協での講話を踏襲したものとなったが、「ギャンブル等依存症対策における各地域の包括的な連携協力体制への参画について」(9月19日付)を発出した事に触れ、年度内での業界の取組など、計画的な依存防止対策の一層の推進を要請した。

①ぱちんこへの依存防止対策(ギャンブル等依存症対策推進基本計画)
自己申告・家族申告プログラム、18歳未満の入場規制、ATM等の撤去等、出玉規制を強化した新規則機の普及、依存対策の調査、依存症対策の基盤整備の取組
②射幸性の抑制に向けた取り組み
③検定機と性能が異なる遊技機の問題
④遊技機の不正改造の絶無
⑤ぱちんこ営業の賞品に関する問題について3点(賞品買取事犯について、賞品の取りそろえの充実について、適切な賞品提供の徹底について)
⑥広告・宣伝等の健全化の徹底について

■講話(要旨)
 ただいま御紹介にあずかりました警察庁保安課長の山田でございます。
 まず初めに同友会が創立25周年を迎えられましたことを心よりお慶び申し上げます。
 また、貴団体には、平素から警察行政の各般にわたりまして、深い御理解と御協力を賜っているところであり、この場をお借りして御礼申し上げます。
 さらにこのたびの台風19号の被害を受けた関係者の方には、心よりお見舞い申し上げます。さて、貴団体は平成6年に国民の大衆娯楽の産業の担い手として、企業倫理の向上、安心して楽しめるサービスの提供、ぱちんこ文化発展への理念を掲げられ、設立された団体であると伺っております。その理念に沿って、これまで業界の健全化のために尽力されてこられると共に、本年で9年目となる東日本大震災復興支援活動をはじめとした各種社会貢献活動に積極的に取組まれていると承知しており、改めて敬意を表する次第です。
 さて、本日はこのような場をいただきましたので、業界の健全化を推進する上で特に必要であると考えている点について何点かお話をさせていただきます。
 最初にぱちんこへの依存防止対策についてお話しします。
 昨年10月に施行されたギャンブル等依存症対策基本法においては、ギャンブル等依存症対策に係る国、地方公共団体、そしてぱちんこ営業者を含む関係事業者等の責務が明らかにされたところであり、関係事業者がその事業活動を行うに当たっては、ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発の防止に配慮するよう努めなければならないとされたところであります。
 このような責務を前提として、本年4月に閣議決定された基本計画では、ぱちんこ業界が自主的に取り組むべき具体的対策が定められました。そして、基本計画では、「基本計画に定める施策の目標については、適時に、その達成状況を調査し、基本計画の進捗状況を把握して対策の効果の評価を行う」こととされています。
 したがって、ぱちんこ営業者が依存防止に係る責務を負う中で、各種依存防止対策が実行に移されるかが、業界として問われることとなるわけです。この点に十分留意いただき、以下、いくつかの取組について更に申し上げたいと思います。
 まず、自己申告・家族申告プログラムについては、貴団体の加盟業者を含め、一部大手のチェーン店において全店舗で導入するなど、導入店拡大の動きが進んでおり、本年8月末現在で約2,900店舗が導入していると承知しております。しかしながら、全国の店舗数全体からみれば導入店舗は3割程度であり、同プログラムの実効性を担保するためには、導入店舗数をより一層拡大することが重要です。貴団体におかれましては、同プログラムの導入の有無が各営業所における依存防止対策への取組姿勢を判断するメルクマールの一つとなり得ることを認識し、同プログラムの更なる普及を図っていただきたいと思います。加えて、現在、日遊協が中心となって検討を進めていただいている、本人の同意のない家族申告による入店制限について、本年度中に開始することとされておりますところ、制度開始後、店舗において速やかな導入が図られますようお願いします。
 また、18歳未満の者の営業所への立ち入らせについては、基本計画において、「ぱちんこ業界は、平成31年度中に、18歳未満の可能性があると認められる者に対する身分証明書による年齢確認を原則化」することとなっています。こうした取組が行われなかったために、客として18歳未満の者を立ち入らせた事実が認知された場合には適切な取締りを行う必要があるものと考えています。改めて、取組に遺漏のないようにお願いします。
 次に、営業所のATM等の撤去等についてです。ATM 及びデビットカードシステムについては、基本計画におけるぱちんこ業界において、平成31年度中に、ぱちんこ営業所のATM及びデビットカードシステムの撤去等に向けた検討に着手し、その結果に基づき順次撤去等推進することとなっています。ATM 及びデビットカードシステムについては、その設置が民間事業者間の契約関係に基づき行われているという現状に留意する必要があり、ギャンブル等依存症対策推進関係者会議においても、業界関係者から「法的に、事業者と事業者で契約をしているということ自体で、ATMの撤去は非常に難しい」との発言がされておりますが、その一方で、同会議においては、ATM等に利用限度額が設定されているとの説明がなされても、なお、複数の委員から 、たとえば「どうしても、ぱちんこをやっている状況の中でそこに設置されていると非常にお金を使いやすくなると、外からはそのように見えます。」とか、「やはりATMは撤去していただきたい。」、「依存症の方々を救うという面から言いますと、事業者の利益や利便性のためにその方々を踏み台にしてまで設置しておく必要はないのではないかと思います。」といった発言がなされています。
 先ほどの自己申告・家族申告プログラムと同様、各営業所、各事業者団体の取り組み姿勢が問われていると考えます。関係者会議での議論をも踏まえ、同会議において「賛同が得られるのか」という視点で考慮した上で、業界として基本計画に基づく取組を推進するようお願いします。
 次に、出玉規制の強化については、令和3年春までに、全ての遊技機を新基準に適合するものに入れ替える必要がありますところ、引き続き計画的に旧規則機の撤去等進めていただきますよう、よろしくお願いします。
 ギャンブル等依存症対策の実効性を最大限に担保するためには、徹底したPDCAサイクルにより計画的な取組を推進することが重要であるとされております。そこで、今般新たに行われることになる一般社団法人遊技産業健全化推進機構による依存防止対策の実施状況調査等を通じて、各ぱちんこ営業所における取組の実施状況について、PDCAサイクルの中で的確に把握し、適宜改善を促進してもらいたいと思います。
 また、基本計画には、警察が行うべき取組も記載されており、各都道府県警察においては、ぱちんこ営業所に対する立入り等を通じて、依存防止対策に係る措置が適切にとられているかの確認を随時行うこととしておりますので、御承知おき願います。
 さらに基本計画の取組のひとつである依存症対策の基盤整備では、本年9月17日付に発出した厚生労働省から各自治体への通知文(障発0917第4号)に合わせ、本年9月19日付で、貴団体をはじめとする各ホール関係団体に対して、「ギャンブル等依存症対策における各地域の包括的な連携協力体制への参画について」と題した通知文を発出しています。皆様におかれましては、各地域の包括的な連携協力体制に参画し、他の関係機関との円滑な連携を確保するとともに、情報や課題の共有、最新の知見の収集等を図り、業界における依存症対策への活用を検討していただけるよう、お願いします。
 以上、ぱちんこへの依存問題への対策について、お話ししてきましたが、この依存問題については、国会や報道等においても大きく取り上げられており、皆様の業界としての取組が注目されています。9月19日付で貴団体をはじめとする各ホール関係団体に対し、基本計画に掲げられた各施策にかかる先進的な取組について随時報告していただくことをお願いしたところです。警察庁として、よい取組は積極的に紹介していきたいと思います。
 次に、射幸性の抑制に向けた取組についてお話しします。
 射幸性の抑制に向けた取組として、業界を挙げて、新基準に該当しない遊技機の撤去に努めているところ、貴団体におかれましては、業界における射幸性抑制に向けた取り決め事項に積極的に取組むよう会員企業へ周知徹底されていると承知しています。ぱちんこへの依存問題等により、ぱちんこ業界に対し、国民から厳しい視線が向けられる中、自主的に決定した削減目標が着実に達成されるよう、業界全体として真摯な取組を進められることを期待しています。
 次に、検定機と性能が異なる遊技機の問題についてお話しします。
 誠に残念なことですが、営業所において遊技くぎを曲げて検定機と異なる性能を創出する事案は、いまだに継続して発生しております。これまでにも、そのような事案は射幸性の適正管理を侵害する悪質な不正改造事案であると申し上げているところ、それでもなお行われるくぎ曲げについては、とりわけ厳しく取締り等を行う必要があると考えています。
 貴団体におかれましては、業界全体をリードして、こうした問題の絶無に向けて積極的に尽力されることを期待いたします。
 次に、遊技機の不正改造の絶無についてお話しします。
 まず、悪質巧妙化している不正改造に対処するため、ぱちんこ営業者、遊技機製造業者という垣根を取り払い、事案の情報共有や有効な防止対策を業界全体で模索し、効果的な施策をより一層推進していただきたいと思います。
 また、一般社団法人遊技産業健全化推進機構の立ち入り検査において、未だに不正改造等の容疑が認められたとして、都道府県警察に通報がなされた事案が散見されますので、業界として引き続き緊張感を持って不正改造の絶無に向けた取組の推進をお願いいたします。さらに、先ほど申し上げた通り、ぱちんこ営業所における依存防止対策の実施状況調査についても今年度中の調査開始に向けた調査が進められるものと承知しております。業界にあっては、この調査が早期かつ実効性をもって実施されるよう、推進機構への支援等をお願いいたします。警察といたしましても、今後とも、推進機構と積極的に連携しつつ、不正改造事犯に対しては、厳正な指導・取締りを推進してまいりたいと考えております。
 次に、ぱちんこ営業の賞品に関する問題についてお話しします。
 まずは賞品買取事犯の根絶についてです。
 賞品買取行為の規制違反は、いまだに継続して発生しています。賞品買取行為の規制は、ぱちんこ営業と賭博の一線を画す重要な規制であり、ぱちんこ営業の根幹に関わるものであることから、警察といたしましても賞品買取事犯につきましては、引き続き厳正な取締等をおこなっていくこととしておりますが、貴団体におかれましても、今一度営業者一人ひとりまで、買取行為の規制の重要性について周知徹底していただきたいと思います。
 次に、賞品の取りそろえの充実、適切な賞品提供の徹底についてです。
 平成18年にぱちんこ営業者関係5団体によりなされた「ぱちんこ営業に係る賞品の取りそろえの充実に関する決議」について、今一度、この決議の重要性を認識していただきたいと思います。また、今一度、各ぱちんこ営業者にあっては、自身の営業所の賞品が等価交換規制を遵守したものとなっているか確認していただくようお願いします。
 最後に、広告・宣伝等の健全化の徹底についてお話しします。
 広告・宣伝等の規制については、特定の日に特定の遊技機を示し、イベント開催を告知して射幸心をそそるものや、隠語を用いて規制の目をかいくぐろうとするような悪質な事案がいまだに発生しており、非常に残念に感じています。こうした広告・宣伝を行うことは、現在業界で進めているぱちんこへの依存防止対策に逆行する行為にも当たるのではないかと思います。このような違法な広告・宣伝等については、今後も指導・取締りを行っていきますが、健全化が警察の指導・取締りによってではなく、業界自らの取組によって進められるよう努めていただきたいと思います。
 加えて、広告・宣伝については、基本計画において、今年度中に全国的な指針を策定し公表することとされています。業界として、基本計画における取組を着実に推進していく上で、こうしたぱちんこへの依存防止に資するような広告・宣伝の在り方についても、他の業界における広告宣伝にかかる自主規制なども参考としてしっかりと検討していただきたいと思います。
 以上、ぱちんこ営業の健全化を推進する上で特に留意していただきたい点を申し述べました。
 ぱちんこ産業は、遊技人口が減少傾向にあるとはいえ、なお、非常に多くの方々が参加している娯楽産業であります。ぱちんこへの依存防止対策等の各種課題は山積しておりますが、業界が一丸となって、一つ一つ迅速かつ真摯に対応していただきたいと思います。その実現なくして、ぱちんこは健全な遊技たり得ないと考えます。他方で今後とも健全化を含む各種課題に真摯に対応する皆様から要望等があれば、我々も真摯に耳を傾ける所存です。貴団体におかれましては、「より良い産業を目指して」という貴団体の理念のもと、今後とも国民的な娯楽産業としてのぱちんこ営業の健全化に向けて、一層尽力されることを期待しています。結びに貴団体のますますの御発展と皆様方の御健勝、御多幸を祈念いたしまして、私の話を終わります。
 御静聴ありがとうございました。