古谷洋一保安課長講話(要約・日遊協総会時)

■冒頭
不正改造事犯や過度な射幸性に関する問題など、片桐前警察庁長官が生活環境課長(組織改変前)であった平成10年時の講話の内容が、現在にも通じる。その時々で問題となった個々の課題は解決されてきたが、業界の根底にある問題は解決できていない。

・過度に射幸性を追求した営業の問題
 ヘビーユーザー依存度が高い傾向にある。一部のマニアに向けた閉じた娯楽ではなく、幅広い年齢層を獲得する施策が必要。そのためには、遊技の敷居を低くする事。気軽にポケットマネーで後腐れなく遊べる業態が求められる。低貸し玉営業が8割の店舗で普及し、2円パチンコより1円パチンコの方が稼動が高い実態からも窺い知れる。
 ぱちんこは博打ではなく遊技。どれだけ玉(メダル)が出たかではなく、玉の動きやリールが揃うか揃わないか等、遊技自体の楽しさに重点を。射幸性の抑制は短期的には収益を下げる可能性があるが、業界全体としては大衆娯楽として今後の展望が開く。

・広告宣伝の健全化
 目立ちにくいWEB上のブログや会員メールで隠語を使い、出玉イベントを告知する営業者が見受けれらる。また、表向きは雑誌社主体のライター等の取材イベント、又はコンパニオン招致イベントと見せつつ、実際には企画立案段階から業者が主導して実質的な出玉イベントを行なう例も把握している。
 そもそも出玉イベントとして出玉が多くなるという事は、スロットの設定を除いた場合、虚偽広告、或いは釘曲げを始めとする遊技機の無承認変更を行っているということ。先日、国会でぱちんこ営業の広告に問題があるのではと懸念を示す形で取り上げられた。その事実を厳粛に受け止めて頂きたい。

・のめり込み問題
 児童車内放置事件などが起こると業界に対する国民一般の視線は厳しさを増す。防止対策マニュアルを全店に浸透させ、確実に実践されたい。RSNへの支援、及び広報啓発活動により、昨年の相談件数は倍増した。これからも支援を拡大し、のめり込みを防ぎ、救い、十分な対応を。
 のめり込み問題は、ぱちんこ遊技の負の側面。どんなものにも負の側面はあるが、それに対してしっかりと取り組むことが業界の責務である。のめり込み問題を根本的に解決する為、その原因といえる過度な射幸性を抑制する原因療法に努めて欲しい。

・不正改造の問題
 昨年は4件の検挙。件数は減少傾向にあり、業界の努力が効果を上げている。遊技産業健全化機構(機構)の立ち入り検査は1万7千店舗を越え、現在までに機構の活動に基づいて検挙に至った事例も13件に上った。これら活動を強力に進め、不正改造に対抗して頂きたい。
 その一方で、不正改造の手口は複雑巧妙化している。不正の痕跡を巧妙に隠蔽するものや、ノーマル戻し、この他、釘曲げを安易に当たり前の事として手を染める業者が後を絶たない。釘曲げを始めとする遊技機の不正改造は、風営法の規則に反するだけではなく、イカサマ行為であり、遊技客の信頼を根本から裏切る行為。また、所要の手続きを踏まず遊技機の故障等で部品交換をするという身勝手な行為が行なわれている。極めて軽度な変更を除いては風営法で定めた手続きを経ないと変更する事はできない。

・賞品買い取り事犯の問題
 昨年は4件の検挙、今年はまだ半分も過ぎていないにも係らず3件の検挙があり、非常に心配な上京。某県において、県遊協の指導の下、組織的に賞品の買い取らせを行なっていたという事案があった。第三者を装った賞品買い取り法人の設立をはじめ、いかなる方法であろうとも、ぱちんこ営業者が買い取り、買い取らせをする行為は絶対に許されない。
 風営法の解釈について、23条関係だけでなく、その他の規定についても役所の有権解釈をしっかりと見て頂きたい。しばしば牽強付会(都合の良いこじつけ)の解釈が流布される事がある。法令そのもの、或いは警察庁から発出した文章、講話など第一次情報に基づいて正しい知識を研鑽する姿勢を持って欲しい。

・適切な賞品提供について
 現在、ぱちんこ営業に関する賞品取り揃え状況について、実態調査をしている。賞品取り揃えの充実は客の多様な要望を満たし換金需要を低減させる趣旨に意義あるもの。義務という事だけではなく、大衆娯楽として支持を受ける業界である為に自主的に行なわなければならない。その際、法令上、有体物しか提供できないので、無体物といわれるような賞品提供など、法令に抵触しないように注意されたい。
 一物一価に関しては、等価交換規制の下で、当然守らなければならない事。しかし、一部のホールでは、かなり確信犯的に『一物二価』をはじめとする、不法な賞品提供が行なわれているという報告を受けている。風営法、賞品取り揃えの充実と併せ、遊技の結果に対する健全的なおまけとして、市場価格に基づく適切な賞品提供がなされるよう徹底をお願いしたい。

・遊技機の適正な管理の徹底
 闇スロや金スロなど、賭博事件の検挙は相次いで行なわれている。ぱちんこ営業者の方々されているわけではないが、これらの賭博事件において、かつてぱちんこ営業に使われた遊技機が改造した上で使われている事も否めない。
 セキュリティー対策委員会において、機歴管理のあり方について検討をしていると承知しています。関係各団体がぱちんこ営業者、或いはメーカー、販社それぞれの立場で、遊技機の機歴管理について何ができるか真剣に考え、具体的成果に結びつけ頂きたい。

・消費税の問題
 ぱちんこ営業における消費税の徴収については、警察庁においても従来の経緯や増税も踏まえて整理をおこなっている。結果については十分な準備期間が取れるようにできるだけ早期にお知らせしたい。当庁から整理を示させて頂いた後に、現在の営業について規制を要する部分があれば、自制をして頂ければと思う。

・ホール関係5団体、風営法検討会からの要望事項についての検討状況
 遊技機の変更手続きの運用を見直して欲しいという要望を頂いている。現在検討中だが、夏を目途にある程度回答を示していけるのではないかと考えている。しかし、遊技機の変更手続きについては、身勝手な解釈をして変更手続きをどんどん省略されていく状況があると、前提(変更手続きに係る法令の規定が遵守される)という所でひっかかる可能性もある。そういう事を謹んで、改めて業界内で責任を持って徹底して頂きたい。

■結び
 違法な営業実態を既得権として考えている営業には、警察としても一切手を緩める事無く取締りをしていかなければならない。違法な営業者に“やり得”させる、真面目に営業されている遵法営業者が損をする事のない、遵法営業者同士での公正な競争環境を整備する事に努力をし、善良な風俗の維持に努めていきたい。
 本年が、ぱちんこ営業の健全化を強力に推進した年として業界の歴史に綴られる年になります事を大変強く願っている。