全日遊連 現状維持ではなく、より一歩、二歩、前に進んで欲しいと講話

全日本遊技事業協同組合連合会(阿部恭久理事長)は1月21日、第一ホテル東京(都内港区)において1月定例全国理事会を開催。15時より、着任して丸2年になる小堀龍一郎保安課長が講話した。講話において、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策にホールはよく取組でいると評価。性能の良い換気設備を備えている事、「黙食」ならぬ「黙遊」をしている事、「パチンコ・パチスロ店営業における新型コロナウイルス感染症の拡大予防ガイドライン」による対応など、引き続き、感染防止対策の徹底を要請した。

旧規則機撤去に関しては、「1月末で多くの旧規則機が期限満了を迎えますが、これまでの努力により、その残り台数は、1年半前に私が聞いていた想定台数より大幅に減っています。もうひと踏ん張りです」とし、全日遊連からも力強いプッシュを促した。関連して、①撤去した旧規則機の不適正処理②新規則機の不正改造について、厳正な取扱を要請し、正しい知識・認識の浸透を図るとともに、業界をリードして、違法行為の排除に尽力を期待した。

一般社団法人 遊技産業健全化推進機構(五木田彬代表理事)については、2007年からスタートした立入検査の取組を「業界に対する信頼の確保に大きな役割を担っている」と活動意義を述べ、業界の協力支援に期待した。また、「ぱちんこへののめり込み・依存防止対策について」要請。①ギャンブル等依存症対策推進基本計画の継続した取組②個々の従業員の器量に頼るのではなく、システム的に行う「自己申告・家族申告プログラム」への取組③地域と連携した対応、を要請した。

最後に、「このような時だからこそ、『手軽で身近な大衆娯楽』としてのぱちんこに立ち返り、新規則機を活用し、リアル空間の良さを活かしつつ、地域の人がほっと安心して遊べることができるような遊技環境を創り出されることを期待しています」と述べ、「地球規模で ESG(環境、社会、ガバナンス)に配慮した」行動指針を推奨した。「現在のイメージを変えるためには、現状維持ではなく、より一歩、二歩、ESGの観点から、本来業務としてできること、社会貢献活動としてできることをそれぞれ考え、前に進めていくことが重要と考えます」と、令和4年の業界に期待した。

<以下原文>
 ただいま御紹介にあずかりました保安課長の小堀でございます。
 皆様方には、平素から警察行政の各般にわたり深い御理解と御協力を賜っており、この場をお借りして御礼申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。

 また、皆様方におかれましては、低炭素社会実行計画に基づく節電、省エネルギー対策のほか、各種の社会貢献活動に尽力されているところであり、改めて敬意を表する次第であります。

 新型コロナウイルス感染症の感染者数は、今年に入り再び増加していますが、これまで業界では、総じて実効的な感染防止対策に取り組んできたと思います。もともとぱちんこ店では、喫煙対策として性能の良い換気設備を備えていることや、お客が周囲と話さずに遊ぶ、「黙食」ならぬ「黙遊」をしていることなど、新型コロナウイルス感染症対策にとって好条件となる要素が備わっていますが、それだけでなく、業界では、一昨年5月に医療関係者の監修を得て、「パチンコ・パチスロ店営業における新型コロナウイルス感染症の拡大予防ガイドライン」を策定し、昨年もその改訂を行っています。そのような努力もあり、これまで私の聞き及ぶ範囲では、ぱちんこ店の客室でクラスターが発生したとは聞いていません。
 しかし、今年に入っても油断のならない状況が続いています。ぱちんこホールの皆様におかれましては、引き続き、政府や各都道府県からの最新の情報、要請や働きかけの内容等を十分に踏まえ、業界のガイドラインに沿い、あるいはそれ以上の感染防止対策を徹底していただきたいと思います。

 本日は折角の機会ですので、今年期限満了を迎える旧規則機の撤去を中心に何点かお話をさせていただきます。

 まず、今年初めの重要課題であります旧規則機の撤去についてです。
 ご案内のとおり、平成29年の規則改正に伴い、旧規則の基準の下で認定・検定を受けた遊技機については、3年間の経過措置期間が設けられましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、令和2年5月に規則改正を行い、経過措置期間を1年延長しました。この経過措置期間が間もなく満了を迎えようとしています。撤去期限の1年延長は、新型コロナウイルス感染症の拡大という予期しなかった事態のためやむを得ない措置でありましたが、一方で、射幸性の抑制という命題が後退しないよう、また、撤去が1年間そのまま後ろ倒しになり、経過措置期間満了間際になって撤去が集中するという事態を避けるよう、パチンコ・パチスロ産業21世紀会で決議を行い、ぱちんこ営業者、遊技機メーカー、遊技機販売会社等が協力・団結し、数値目標を定めて、計画的な撤去を進めてきました。これまでの真摯な取組に敬意を表したいと思います。
 今月末で多くの旧規則機が期限満了を迎えますが、これまでの努力により、その残り台数は、1年半前に私が聞いていた想定台数より大幅に減っています。もうひと踏ん張りです。各ホールにおかれては、もし経過措置期間の経過後に旧規則機が営業の用に供されている場合には取締りの対象になることをも念頭に、確実に旧規則機の撤去を進めるよう、貴連合会からも力強いプッシュをお願いします。

 次に、旧規則機の撤去にまつわる問題点として、①撤去した旧規則機の不適正処理、②新規則機の不正改造について述べます。

 撤去された遊技機の処理をめぐっては、かつて、経済的価値の高いパーツを目当てに使用済み遊技機が売買され、当該パーツ以外の部分が不法投棄等される事態や、ぱちんこ店に置かれていた高い射幸性を示す遊技機が転々流通して「闇スロ」と呼ばれる賭博に使われる事態など、遊技機が適切に廃棄処理されなかったことに起因する問題が発生しました。
 このような反省を踏まえ、現在、業界では、遊技機メーカー団体が中心となり、遊技機の機歴の管理を行うとともに、ぱちんこホールから使用済み遊技機を買い取り、責任を持って適正処理を行う取組がなされていると承知しています。しかしここで問題となるのは、今後相当な数の撤去遊技機が出る中で、それらが業界で構築された遊技機のリサイクル・廃棄システムにしっかり乗せられるかどうかです。
 既にぱちんこホールの中には、店から撤去した旧規則機を倉庫で保管しているところが少なからずあると聞きます。こうした使用済みの遊技機について、ぱちんこ営業者が他人任せにせず、自ら責任を持って処置することが必要です。
 環境への意識が高まる中、もし今、「野積み」等のような事態が起これば、業界のダメージは計り知れません。各ホールにおかれては、排出する遊技機台数や保管スペース等を管理し、計画的かつ適正な廃棄処理を行うよう、貴連合会からも他団体と協力して強力なバックアップをお願いします。

 また、規則改正により射幸性が抑えられた反動として、不正に射幸性を上げようとする遊技機の不正改造事案が行われることが懸念されます。くぎ曲げを含む不正改造事案については、厳正に取り締まる方針に変わりはありません。また、これも当然ですが、遊技機の部品等について、経年劣化によるものを含め、承認等の手続なく交換等した場合には、無承認変更等として重い処分の対象になります。
 貴連合会におかれましては、引き続き全国の組合員に対し正しい知識・認識の浸透を図るとともに、業界をリードして、違法行為の排除に尽力されることを期待しています。

 業界からの不正排除という点では、遊技産業健全化推進機構は、平成19年から活動を開始し、今や欠かすことができない存在となっています。ぱちんこホールと緊張感を保ちつつ、各店舗への立入りを行い、不正改造の疑いのある事案を認知した場合には都道府県警察に通報することなどを通じ、業界からの不正排除、換言すれば、業界に対する信頼の確保に大きな役割を担っているものと評価しています。警察としては、今後も機構と連携し、健全化のための対策を推進していきたいと考えています。引き続き、業界全体で機構の活動への協力・支援をお願いします。

 最後に、ぱちんこへののめり込み・依存防止対策について述べます。
 ギャンブル等依存症対策推進基本計画は、令和3年度が最終年度となっており、本年3月末を目途に基本計画の変更が行われることが予定されています。業界では、既に、現行の基本計画に基づき、ぱちんこの依存防止対策に係る実施規程を制定するなど、各種の対策に取り組まれていますが、引き続き、基本計画に基づく各種取組を着実に実施されるようお願いします。
 基本計画を成し遂げるためには、ぱちんこホールだけでなく、遊技機メーカーを含め、多くの関係者が取り組む必要があります。ただその中で、お客と直接接することができるのは、ぱちんこホールの皆様だけです。ぱちんこへののめり込み・依存で困っていらっしゃる方は、お客の中の一部かもしれません。しかし、そうした方やその御家族の方の声に耳を傾け、真摯に向き合う、これができるのはホールの皆様方しかいません。
 これを個々の従業員の器量に頼るのではなく、システム的に行うのが「自己申告・家族申告プログラム」です。貴連合会では、未導入ホールの経営者・管理者に個別に導入を働きかけるための取組を推進され、導入率が大きく向上した県もあると承知しています。引き続き、自己申告プログラム、家族申告プログラムの導入店舗の拡大、さらに同プログラムの実効性を高める取組等を進められることを大いに期待しています。
 また、のめり込み・依存対策を進める上では、関係機関との連携協力も重要です。都道府県等と関係機関から成る連携会議が開催されている地域では、それへの積極的な参画を通じて、連携を深めていただきたいですし、また、ある県遊協やホール企業で行われているように、関係機関を巻き込み、依存防止のためのセミナーを開催することも大変良い取組であると評価しています。今後更に他機関と連携した取組を貴連合会で広げられることを期待しています。

 以上、旧規則機の撤去を中心に、お話ししましたが、新規則機については、現在も遊技機メーカーにおいて様々な型式の開発努力が続けられています。遊技機メーカー団体からは、当庁に対し、射幸性を上げるものではなく、魅力ある遊技機づくりができるようにしたい、多彩な演出やゲーム性を高める遊技機をつくれるようにしたいと、様々な相談があり、議論をしてきました。いずれ皆様のところに、遊技機メーカーの努力の結果が届けられるものと思います。

 新型コロナウイルス感染症の発現を契機に、国民の経済やライフスタイルなど様々な点が変わろうとしています。
 業界として何か新たなことに手を付けることも結構だと思います。ただ、このような時だからこそ、「手軽で身近な大衆娯楽」としてのぱちんこに立ち返り、新規則機を活用し、リアル空間の良さを活かしつつ、地域の人がほっと安心して遊べることができるような遊技環境を創り出されることを期待しています。
 また、より幅広い方から愛されるためにも、健全営業に一層努め、世間のイメージを払拭することが必要と考えます。現在、地球規模でESG(環境、社会、ガバナンス)に配慮した行動が求められ、これらが重要な評価基準の一つになっています。これまでも業界では、環境対策、地域貢献、不正排除等、様々な取組をしてきたと思います。その中には世間にあまり知られていないこともあります。ただ、現在のイメージを変えるためには、現状維持ではなく、より一歩、二歩、ESGの観点から、本来業務としてできること、社会貢献活動としてできることをそれぞれ考え、前に進めていくことが重要と考えます。
 貴連合会の今後の取組に大いに期待したいと思います。

 結びに、貴連合会の益々の御発展と皆様方の御健勝、御多幸を祈念いたしまして、私の話を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。