ワンデーポート 大阪大学で依存問題セミナー開催

認定NPO法人ワンデーポートは6月30日、大阪大学豊中キャンパス(大阪府豊中市)において「ギャンブル等依存問題セミナーin大阪〜パチンコ・パチスロに依存する人多様な背景と支援について」を開催した。ワンデーポートは、2000年からギャンブル等の問題に悩む人の回復支援施設(神奈川県横浜市)を運営する活動を通じ、その知見を重ねており、依存問題についての啓蒙・啓発にも積極的に取り組んでいる。今回は、全日本社会貢献団体機構の支援、大阪大学大学院文学研究科・大阪大学文学研究科臨床哲学・倫理学研究室等の共催により、自治体挙げてIR誘致に取り組む大阪地区での開催が実現した。

セミナーには、依存問題に悩む当事者、当事者の家族、そして支援に携わる援助者、学生・研究者、依存問題に関心のある人、そしてパチンコ事業者等61名が参加した。午前の部では、まず主催者を代表して中村努施設長(ワンデーポート)が、IR法により大きな関心を集める事になり、法制化された「ギャンブル等依存症」について、再認識しなければならないと開催意義を述べた。最初に小西真理子講師(大阪大学大学院文学研究科講師)が「共依存の考え方」と題して基調講演。その後、午後からパネラーを務める朝倉新氏(新泉こころのクリニック院長)、稲村厚氏(司法書士・ワンデーポート理事長)、高澤和彦氏(精神保健福祉士・浦和まはろ相談室代表)、丈幻氏(パチンコ研究家)、中村氏、小西氏の6名が自己紹介と問題意識を述べ合った。

午後からは、「個別性に基づいた本人支援について」「個別性に基づいた家族支援について」の2テーマについてディスカッションやワークショップを行い、依存問題との向き合い方、考え方について共有した。

【セミナー終了後の各パネラーの感想】
■「私自身、2000年から現在においても、依存に対する考え方やとらえ方が目まぐるしく変わっているので、今の依存問題についてお知らせできる機会として大阪開催が実現できた。特に今回は、共依存の考え方が間違ってとらえられていると思うので、今回のテーマとした」(中村氏)。
■「これまでにもワンデーポートの方々と勉強会を行ってきた。しかし、パチンコと共依存というテーマで開くセミナーは初めて。今日のワークショップで感じたのは、家族の方が本人の借金を肩代わりしたりする事(共依存)について、家族もまた周りから責められているケースがある。そうした現実がもう少し違う支援につながればと思いました」(小西氏)。
■「私自身も共依存について考えを整理する事ができた」(高澤氏)。
■「色々な立場の方々が熱心に参加していただいた。個別性が大事なのですが、世間一般は、依存は病気というような安易な見方に落ち着けようとする。面倒くさいが、依存の問題の本当の事を伝えていかなければいけない」(丈幻氏)。
■「依存症の臨床というのは、考え方が硬直しやすい傾向を心配している。依存症の診療・治療・関わり方は、本来人それぞれに違っているので、難しいと思われるが、安心材料があれば扱いやすく、こんなモノという通り一遍になりやすいのかもしれない。こうした硬直した考え方を柔らかくしていこうというのが、今回のセミナーの目的だと思います」(朝倉氏)。
■「家族支援のワークショップを担当したが、需要を感じた。ワンデーポートは神奈川を中心とした活動ですが、関西方面からの相談にも対応できるようになればと思った。行政からも熱心な方の参加をいただき、こうした担当者をサポートできる支援にもつなげていければと思いました。国が色々言っても現場ではしっかり対応できるようになると、私達も励まされた気持ち」(稲村氏)。

ワンデーポートでは、令和元年度は長野、名古屋でのセミナー開催を予定しているという。

左から中村氏、高澤氏、丈幻氏、小西氏、朝倉氏、稲村氏