IR法案 国会議員7氏を招きカジノ導入とギャンブル依存症対策を考えるシンポジウム開催

一般社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(田中紀子代表)は10月16日、星陵会館(東京都千代田区永田町)において「カジノ導入とギャンブル依存症対策を考えるシンポジウム」を開催。IR法案の動向が注視される中、国会議員7氏をパネラーに迎え、約150名の参加の中、議論を進めた。

IR法案はさて置き、ギャンブル依存症問題に一刻も早く対策すべきと警鐘を鳴らすシンポジウムは、約2時間余聞き応えある議論が交わされた。冒頭、田中代表は「ギャンブル依存症者の家族を持つこと、自らの依存症経験を含め10年余、各地での自助グループの活動が縁となり、2014年2月に法人格を持った。たまたまIR法案の審議が始まり、いろいろ意見を求められる事が多くなった。私たちは、IR法案、カジノ建設について賛成反対といった立場ではない。IR法案が出てきてから、これだけ多くの方々がギャンブル依存症について振り返っていただけたことに感謝している。ギャンブル依存症対策について、何らかの法案のような形で取り組んでいただけると有難い」と訴えた。

【シンポジウム】(以下・箇条書き)
同団体のアドバイザー役という初鹿氏の司会の中、登壇した国会議員7氏を紹介。IR議連の主力メンバー・岩屋議員、小沢議員、鈴木議員からは、ギャンブル依存症問題をしっかりサポートしていかなければならないとIR法案への理解を促した。民主党としてはIR法案への態度を保留しているという小川議員は私的意見として、刑法の観点含め「カジノは作らない方がよい」。公明党として態度保留しているという高木議員は、内閣委員会理事という立場で、シンガポール視察した点含め慎重に検討している段階と報告。多重債務の問題から関わってきたギャンブル依存症について、何とかしなければいけないと共産党の大門議員は、「(射幸性の)蛇口を閉めること」。医師でもある薬師寺議員(みんなの党)は、ギャンブル依存症対策について、まだまだ不足していると、啓蒙啓発活動の必要性を指摘。初鹿氏は現状として「単にパチンコが悪いと言っているだけでは、依存症の問題は解決しないし、パチンコがダメなら別のものに行くということが依存症の最大の問題」と述べ、ギャンブル依存症対策、それに関するデータベース等の取り組みが少なすぎることを問題提起。「ギャンブル依存症536万人」という今夏の厚生労働省のニュース報道に関して薬師寺議員は「わが国おける飲酒の実態ならびに飲酒に関する生活習慣病、公衆衛生上の諸問題とその対策に関する総合的研究」の調査の中で「たまたま出てきた数字。まだ現状把握ができていない。皆様方(国民)の認識を新たにしていただくためにも、現状把握を調査分析しなければいけない」。

議論が折り返した頃、田中代表は「太古の昔から、人間って賭けてきたと思うのです。禁じればよいとか、無くせばよいとかでは、ギャンブル依存症者の奥深さをご理解いただけていない。また、今日は多くのマスコミの方々が取材に来ていただいている。その記事でギャンブル依存症は大変だとか、取り返しがつかないとかいう論調になりはしないかとハラハラしています。回復されている方々も多く来場されていて、私もその一人。回復できること、理解者もいますし、イエロー、レッドゾーンの方もいますが、ちゃんと相談、対策があり、回復できる。ただ今、回復者が少ないのが問題なのです。その問題で苦しんでいる方々に、一人で抱え込まないよう、ぜひお伝えしてください」と強調した。

小川議員/賭け事をつきつめると、当落やってみなければわからない議員の選挙も賭けみたいなもの。どこで線引きするかだろう。今ある公営競技はより健全性を高めていくことだ。

大門議員/カジノが解禁されれば、今あるパチンコは、カジノと同じになりたいと主張するだろう。

鈴木議員/東京ビッグサイトの規模は世界で71番目。マイス含めた統合型リゾートの必要性が日本に必要。

薬師寺議員/日本の現状として子育ての環境が心配。のめり込みによる幼児の車内放置の現実を忘れてはならない。

田中代表/カジノ議論抜きにギャンブル依存症対策は、考えられないものなのか。依存症の家庭に育った子どもたちの対応含め、今、切実な問題。

高木議員/カジノ議論に絡めると、ギャンブル依存症の問題が進みにくくなる。賛成派云々で誤解されることは懸念。カジノ議論で埋もれてしまうことがないよう、まず予算をつけ調査することが第一歩。支援の道筋をつけ、きめ細かく対応することだ。

薬師寺議員/ギャンブル依存症がテーマだが、ゲーム依存、ネット依存等様々な問題が心配され、国会でも議論していきたい。

大門議員/当面はパチンコ対策。今、厚生労働省は全国で5つの専門医窓口(病院)を設置した程度。さらに広げていき、こうした活動には予算が必要になるだろうから、パチンコ業界に課税する提案をしていきたい。

小沢議員/ギャンブル依存症について、政治の場でもしっかり議論しなければいけないと思った。

高木議員/シンガポールの視察を通して、世界の富裕層のニーズに対応するためとはいえ、日本におけるIR誘致の懸念について国会でしっかり議論していきたい。

小川議員/日本にカジノはいらない。

岩屋議員/ギャンブル依存症について日々国会議員も勉強し認識につとめている。依存症対策について世界的にも日本は立ち遅れているようだ。IRを成就させることを契機にしっかり対応しなければいけない。

【シンポジウム】
コメンテーター/田中紀子代表(ギャンブル依存症問題を考える会)
司会/初鹿明博元衆議院議員(都議時代から、医療や介護に熱心な議員として知られている)
自民党/岩屋毅衆議院議員(IR議連・幹事長)
民主党/小川敏夫参議院議員(元法務大臣・競走馬を所有するほどの競馬ファン)
公明党/高木美智代衆議院議員(内閣委員会理事)
維新の党/小沢鋭仁衆議院議員(IR議連・副会長)
共産党/大門実紀史参議院議員(IR法案の問題性追及の先鋒)
みんなの党/薬師寺 みちよ参議院議員(医師)
生活の党/鈴木克昌衆議院議員(IR議連・副会長)

田中代表

継続審議中のIR法案に関係する国会議員を招いたことで、テレビ新聞各社の取材の中、ギャンブル依存症対策の関心が深まった