警察庁保安課 古谷洋一課長講話

 皆様、明けましておめでとうございます。ただいま御紹介にあずかりました保安課長の古谷でございます。
 旧年中は警察行政の各般にわたり、深い御理解と御協力を賜りましたことに対しまして、この場をお借りして御礼申し上げます。また、本年も引き続きよろしくお願いいたします。

 さて、昨年を振り返りますと、ぱちんこ業界におかれては、一昨年に引き続き、東日本大震災の被災地に対しボランティア活動を始めとする様々な支援を行なわれたほか、社会福祉への支援を始めとする様々な社会貢献が行なわれました。また、依然社会的な課題となっている節電についても、社会の要請と真摯に向き合い、相応の実績を上げられたと伺っております。
 このように我が国における一大レジャー産業として、その社会的責任を果たそうと皆様が御尽力された一年であったかと思います。
 また、遊技人口や売上高が減少傾向にあるとされる中、1円ぱちんこに代表される遊技料金の低価格化、遊技機の不正改造防止対策、射幸性を抑えた遊技機の開発等、幅広い年齢層の方に少ない遊技料金で、安心して遊技そのものの面白さを楽しんでもらうための御努力が続けられているとも伺っております。
 しかしながら、皆様の御努力の一方で、依然として、のめり込みに起因すると思われる各種問題や、遊技機の不正改造事犯、賞品買取事犯、違法な広告宣伝・賞品提供等が後を絶たず、健全化を阻害する要因が残されていることも事実です。年の初めから歴代の保安課長あるいは生活環境課長が毎年お話ししてきたことをこのように繰り返してお話しせざるを得ないのは誠に残念なことではありますが、ぱちんこが手軽に安く安心して遊べる真の大衆娯楽として国民に幅広く受け入れられるよう、こうした問題一つ一つに対し、全日遊連を始め業界が一致団結して、誠実に、かつ、着実に対処していただきたいと考えております。

 さて、本日は若干お時間をいただいておりますので、年頭にあたり、今年こそは健全化が強力に推進された年として業界の歴史に位置付けられる年となるよう、私どもが、ぱちんこが身近な大衆娯楽として広く国民から評価されるために必要と考えていることについて、何点かお話ししたいと思います。
 まず、手軽に安く安心して遊技ができる環境の整備についてお話します。
 ぱちんこ産業の現状について申し上げますと、公益財団法人日本生産性本部の「レジャー白書2012」によれば、市場規模は8年連続して減少し、かつて30兆円産業と言われたものが、平成23年は18兆9千億円となっております。また、ぱちんこ遊技への参加人口は、対平成22年比で410万人、24.6%の減少ということであり、これまでのファンのうち、わずか1年で、実に4人に1人がぱちんこ遊技から離れていったということになります。他方で、年間遊技回数と年間の平均費用については、それぞれ対平成22年比で7.9回、1万6,600円の増加となっており、ぱちんこ営業の売上において、いわゆるヘビーユーザーへの依存度が大きくなっているものと推察されます。もちろん、平成23年には、東日本大震災もありましたし、これらの数字の変化には様々な要因が関係しているものと考えられますので確定的な評価はできないと思っていますが、いずれにしましても、業界がこれまで進めてきた安く安心して楽しむことができる遊技を幅広い年齢層の方に提供するという方向に異変が生じているのではないかと危惧しているところです。
 このため、ファンの裾野を広げ、ヘビーユーザーへの依存を解消することが業界にとって一層重要になってくるものと考えます。皆様の立場で業界の維持・発展を考えたとき、限られた数のヘビーユーザーを1万2千を超える店舗が奪い合い、一部のマニアに向けた閉じた娯楽として存続していくのではなく、幅広い年齢層を対象に新規ファンを獲得するためには、今業界が何をしなければならないかを真剣に考えなければならない時期にあることを、レジャー白書の数字は物語っているのではないかと思います。幅広い年齢層の人々にぱちんこ遊技への興味を向けてもらう上で基本となるのは、遊技の敷居が低いこと、すなわち、特別に身構えずにふらっと気晴らしに立ち寄って、ポケットマネーの範囲内で後腐れなく適度に楽しんで帰ることができるという身近な大衆娯楽としてのぱちんこ本来の姿にほかならないと思います。そして、その本来の姿のぱちんこを望むファンの多いことは、低貸玉営業が7割を超える店舗に普及しているという実態や一般に4円ぱちんこより1円ぱちんこのほうが稼働率が高いと言われる実態からうかがい知ることができるのではないかと思っております。業界がこれまで進めてきた射幸性の抑制と低貸玉営業の普及・定着は、健全な形でファンの裾野を広げるという点からも、業界にとって意義のあることであり、遊技人口の減少に歯止めを掛けることを見据えた取組とも捉えられると思います。
 射幸性の抑制については、現在、ぱちんこ営業者団体と遊技機製造業者団体とが協力して、遊技客のニーズに応えた射幸性の低い、幅のあるゲーム性を有する遊技機の開発に力を注いでいると伺っておりますが、業界全体で引き続き今の方向性を堅持していただきたいと考えております。遊技客と直接接するホールの意向は、業界の方向性に大きな影響を与えるものです。全日遊連において積極的に問題提起していただき、ぱちんこがより多くの人々に親しまれる健全なものとなっていくことを期待しております。
 なお、本来のぱちんこ遊技の醍醐味は、それが遊技である以上、遊技球の動きやリールが揃うか揃わないかに対する期待感にあるのであって、その結果として表示される遊技球や遊技メダル等の数量に対する期待感ではないと思っております。その意味で、遊技そのものの面白さによって、ファンが満足し、また、納得できるような遊技環境を業界全体で作り上げていただきたいと思います。
 ここまで繰り返しお話ししてきた射幸性の抑制や遵法営業の徹底は、短期的には収益を下げる可能性があるかもしれませんが、長期的な視野に立てば、新たなファンを獲得し、現在のファンを維持して、社会の中で肯定的な評価の下に業の存続を図るためには避けられないことであろうと思います。言い換えれば、違法営業をしてきた者にとっては営業規模の縮小を余儀なくされるものですが、ぱちんこ業界全体としては、大衆娯楽として、今後の展望が開けてくるということなのではないかと思います。各都道府県組合の重鎮である皆様にとって、いつまでも健全化が道半ばであるとして、その徹底を求められ続けるのは、甚だ残念であると思います。今年という年は、ぱちんこ営業の健全化を真に進ませる上で、経営権を有する営業者レベルの全員が、「もうけのためには違法な営業となっても仕方がない。」、「これまで摘発されなかった営業方法だから、行政講話で是正を指導されようが今までどおり既得権として続けていける。」、「こじつければグレーゾーンとして行政に言い訳できるから大丈夫である。」といった意識を全て捨て去る大変革の年あってほしいと思っております。警察としては、そのために行なわれる業界の自主的な取組への支援を始め、必要と思われる努力を惜しまないつもりです。

 次に、いわゆるのめり込み問題への対策についてお話しします。
 射幸性の抑制に向けた取組が続けられていながら、依然として、ぱちんこ遊技へののめり込みが要因となって犯罪に走ったというような報道が散見されるところです。また、ぱちんこ店の駐車場における児童の車内放置事件が依然として発生していることも事実であります。
 のめり込み問題に対応する機関としては、全日遊連の支援で設立され、現在では業界全体で支援しているぱちんこ依存問題相談機関「特定非営利活動法人リカバリーサポート・ネットワーク」があります。リカバリーサポート・ネットワークでは、平成18年4月の設立以来、約8千件に上る相談に対応しているとのことであり、のめり込みに起因する問題が深刻化する前の段階で改善を図るだけでなく、のめり込みに陥った方の回復という観点からも、有益な取組がなされていると認識しております。
 また、昨年、業界では、のめり込み防止対策として営業所内外における注意喚起・広報啓発を一層強化されました。こうした業界の取組を高く評価したいと思います。全日遊連においても、各組合員の店舗において、リカバリーサポート・ネットワークの広報ポスターの掲示を進められていると伺っており、引き続き全店舗での掲示が達成されるよう周知をお願いします。他方で、リカバリーサポート・ネットワークへの相談件数は急増し、その負担が増加しているとも伺っております。これは、ぱちんこ営業の陰で、それだけの人々の相談ニーズがあったにもかかわらず、それが埋もれていたのが、皆様の御尽力によりくみ取られて、目に見える形で現れてきたということだと考えます。つまり、逆に言えば、これらの人々には従前は十分に手が届いていなかったということでもありますところ、業界として、自らの産業に伴って発生したのめり込み問題というこの社会的な問題に積極的に関り、実のある改善につなげていただきたいと思います。リカバリーサポート・ネットワークでの取組は、その重要な柱の一つであるわけですが、先ほどお話ししたように、その負担は大きく増しております。のめり込み問題への相談対応に当たるには、相応の知識、経験が必要となるため、すぐに体制を拡充するのは難しいのかもしれませんが、注意喚起・広報啓発の取組を継続するとともに、リカバリーサポート・ネットワークを始めとする回復支援団体への支援を拡大し、のめり込み問題に悩み苦しむ人々に十分な対応が行き届くようにしていただきたいと思います。
 のめり込み問題は、ぱちんこ遊技の負の側面と言われることがありますが、この負の側面にしっかりと取り組むことは、ファンが、安全に、安心して遊技できる環境整備の一環でもあります。引き続き業界全体で真摯に対応していただきたいと思います。
 ぱちんこ店の駐車場における児童の車内放置事件については、誠に痛ましいことに5年連続で発生しており、平成16年以降では実に13件にも上っているところです。本来、日々のストレスを解消し、明日への活力を養うための大衆娯楽を通じて、逆に事件、事故を生じさせる人が出てくるというのは本末転倒であり、皆様にとっても全く不本意であろうと思います。
 こうした事件の防止を徹底するために、全日遊連におかれては、毎年5月から10月にかけての「子供事故防止強化期間」を中心に、組合員に対して広報啓発を行なっていただいており、大変心強く感じております。これにより、各営業所が駐車場内の巡回活動等に取り組まれた結果、昨年中は19件25名の児童車内放置を発見されたと伺っております。また、全日遊連を始めとするホール関係5団体では、現在、児童車内放置事件を防止するための対策マニュアルを策定中であり、近日公表される予定であると伺っております。この対策マニュアルについても、大変期待しているところであり、こうした事件の防止に業界が真剣に取り組むためのよりどころとして、全ての営業所において確実に実施していただきたいと思います。
 なお、児童の車内放置事件の絶無には、広報啓発や駐車場のパトロールでは限界があるという声があります。そうであるからこそ、以前から当庁がお願いしているとおり、児童が同乗する車両については駐車場への入場を断るという取組が重要になってくるわけですし、さらには、ただいま例として申し上げた対症療法的な活動のみならず、過度の射幸性の追及というのめり込み問題のそもそもの原因について正面から目を向け、射幸性の抑制という原因療法に業界全体として取り組む必要があると考えます。これは、ぱちんこ営業が、真の大衆娯楽として国民の信頼を勝ち取る上で避けては通れない道であり、また、最適かつ最短の道であると思いますので、引き続き、業界における自主的な御努力をお願いします。

 次に、広告・宣伝等の健全化の徹底についてお話しします。
 御承知のとおり、広告・宣伝等については、平成14年に一度文書により健全化の指導を行なった経緯がありますが、その後、営業競争の激化に伴い、隠語を用いるなどして、徐々にまた違法な広告・宣伝等を行なう営業者がみられるようになり、再び善良の風俗や清浄な風俗環境を害する状況が生じてきました。こうした状況に警察庁として問題意識を抱えていたところに、全日遊連を含むホール関係5団体から、広告・宣伝等の健全化を徹底させるため、平成14年に示された違法な表示例をより一層明確化してほしいとの要望を受けたことから、一昨年の6月に広告・宣伝等の規制に関する二度目の通知を業界に示しました。この際には、平成14年に示した違法な表示例に更に事例を追加するとともに、隠語等を使用して規制逃れを図ろうとする悪質な表示も違法なものであると明示する一方で、原則として広告・宣伝等の規制に抵触しない表示の例も初めて明確に示し、そのような表示を用いれば、それぞれの営業者が安心して広告・宣伝等を行なうことができるように配慮しました。このように、一昨年の通知は、ぱちんこ営業者による風営法違反を抑制するととともに、ぱちんこ業界内部における健全化の取組を促すことを期したものであったのですが、残念なことに、この趣旨に反し、隠語のみならず、様々な脱法的表現により善良の風俗及び清浄な風俗環境を害するおそれのある広告・宣伝等を行おうとするぱちんこ営業者等が存在していたため、改めて広告・宣伝等に関する規制の運用方針を整理し、昨年7月に三度目の通知を行なうに至ったわけです。私どもがここまでせざるを得なかった背景、業界の遵法営業に対する実際の考え方、姿勢をよく皆様に御理解いただきたいと思います。
 昨年の通知以降、表立って広告・宣伝等の規制に違反する事例は、全国的に相当数減ったという印象ではありますが、行政処分をしなければならないというような違法な広告・宣伝等を行なっている営業者が皆無となったわけではありません。従前からある「○○○の日」というものや、「店長就任記念」などといった文言によりいわゆる出玉イベントを告知するものについて、いまだに行政処分の報告等が上がってきておりますし、新聞折込チラシと比較して目立ちにくいウェブサイトやブログ等で、隠語を用いていわゆる出玉イベントを告知する営業者も散見されるところです。また、表面的には、雑誌社が主催するライター等の取材イベント又はコンパニオン等の招致イベントと見せ掛けつつ、実際には、企画立案段階からぱちんこ営業者が主導して、実質的な出玉イベントを行おうとしているように推察される例も、いわゆるファン雑誌等を通じて把握しております。
 そもそも、出玉イベントは、回胴式遊技機を高設定にする場合以外は、違法行為を前提とするもので、虚偽広告でなければ、釘曲げを始めとする遊技機の無承認変更を行っているわけですから、いあまだに違法広告等を行おうとする営業者は、その点でも警察から疑義の目が向けられるということに思いを致すべきですし、そうであるからこそ広告・宣伝等の指導取締りが緩やかにならないのだということを理解してもらいたいと思います。
 広告・宣伝等の健全化に関しては、一般的には、広告・宣伝等の規制に抵触しない表示例も含めて方向性をお示し済みであると認識しており、また、いつまでも警察の指導取締りに頼るというような体質を改め、業界が自発的に進めていく時期に来ていると思っております。自発的に、そして自立的に、違法行為を行う営業者を業界内部で抑え込むという成熟した産業であれば当然認められるそのような姿勢が、ぱちんこ業界にも定着していくことを願ってやみません。その意味で、全日遊連が各都道府県の遊技業組合に指導している違法広告の「相互チェックシステム」は、大変画期的なものであり、私どもとしても高く評価しております。このシステムについては、引き続き適切な運用がなされ、広告・宣伝等の健全化の徹底に貢献することを期待しております。
 皆様には、広告・宣伝等の健全化を徹底することが、遊技機における射幸性の抑制と同様に、過度なのめり込み及びのめり込みに起因する犯罪等の防止という点でも意義を有することも踏まえ、業界全体で広告・宣伝等の適正化が徹底されるよう取り組んでいただきたいと思います。

 次に、遊技機の不正改造の絶無についてお話しします。
 これまでの検挙件数を見ますと、平成20年が20件、平成21年が12件、平成22年が6件、平成23年が6件と年々減少しております。その背景として、不正改造情報の収集やこれを生かした不正に強い遊技機づくり等の業界における様々な取組が奏功していることが挙げられます。とりわけ、業界の総意で設立し、業界全体でその活動を支えている一般社団法人遊技産業健全化推進機構の活動については、立入検査店舗数が昨年末時点で約1万6千店舗になり、この立入検査を端緒に検挙に至った事例も13件に上るなど、その成果は着実に上がっていると認識しております。また、都道府県方面遊技業協同組合が行っている立入りによっても、不正改造が抑止されていると考えております。
 しかしながら、こうした業界団体の取組の一方で、不正改造の手口は一層複雑化巧妙化しており、主基板のICに不正が行われているにもかかわらず、カシメの偽造を含め、その不正の痕跡が巧妙に隠され、非常に分かりづらいものも認められていますし、いわゆるノーマル戻しが疑われる遊技機も散見されています。このほか、釘曲げに手を染める営業者等は依然後を絶ちません。これらを踏まえると、不正改造事犯はいまだに根強く、相当数存在していると考えられます。また、ゴト事案の中には、営業所の従業員が関与するケースもみられるところです。
 不正改造事犯やゴト事犯を防ぐためには、営業者のみならず、従業員の一人一人が自分の働く業界の重要な問題としての意識を持ち、遊技機について日常の点検を確実に実施するなど、強い責任感を持って取り組むことが大変重要であると考えておりますので、営業者の皆様には、従業員の指導も含めた各種取組を積極的に進めていただきたいと思っています。
 警察といたしましては、引き続き、遊技産業健全化推進機構と積極的に連携しつつ、厳正な取締りを推進してまいりたいと考えております。

 ただいま、遊技産業健全化推進機構のお話が出ましたので、申し添えておきますが、昨年11月、同機構の立入検査活動が開始して6年目となるにもかかわらず、秋田県内のホールで立入検査拒否事案があったところです。業界の総意で第三者機関として同機構を設立し、業界全体でその活動を支えている中で、このような事案の発生を聞くには非常に残念に思います。機構の活動の円滑な実施のためには、不正を排除しようという業界全体の意思と機構の活動への十分な理解が必要不可欠であります。機構の趣旨に賛同した店舗は、機構へ随時無通告での立入検査を認める誓約書を提出しているはずですが、機構設立から6年半近くが経過し、業界自らが不正を排除するために設立した機構の活動・役割についての理解が営業者の間で薄れているのではないかと懸念しております。今一度、業界の全ての関係者が、機構の存在意義とその活動について確認し、理解を深めていただきたいと思います。先ほどもお話ししたとおり、機構は着実に実績を積み重ねておりますところ、警察としては、引き続き、法執行を始めとする様々な場面において積極的に連携して、不正改造事犯の取締りに努めていきたいと考えています。
 釘曲げを始めとする遊技機の不正改造は、本来店がコントロールできない遊技機の性能に変更を加えるという点で、絶対にあってはならない「いかさま」であり、風営法の規制に反するだけでなく、客の信頼に対する裏切り行為であります。業界のイメージを、そして、社会的地位を上げようと、業界では長年にわたり努力を続けてこられましたが、他方で、このような風潮に改善が見られなければ、いつまでも真の意味での大衆娯楽とはなり得ないでしょうし、ファン以外の人々からの肯定的な評価にも結び付かないのではないかと思っています。
 皆様には、不正改造が根絶され、手軽に、安く、安心して遊技できる環境が整備されるよう、遊技機製造業者、遊技機販売業者等と連携した取組を一層強力に進めていただきたいと思います。

 次に、ぱちんこ営業の賞品に関する問題の是正について2点お話しします。
 1点目は、賞品買取りの絶無についてです。
 風営法は、営業者が客に提供した賞品を買い取ることを禁止しております。これについては、営業者がその遊技場で提供した賞品を買い取る場合のほか、営業者が直接に賞品を買い取るものでない場合であっても、営業者がこれに関与していると認められる場合には取締りの対象となります。この賞品買取りのほか、都道府県条例により、賞品を買い取らせないことを営業者の遵守事項として規定しているところも多く、これを行政処分の対象としています。これらは、皆様ぱちんこ営業者の方々にとっては、当然御承知のことであり、本来は今更申し上げる必要がないはずなのですが、賞品の買取りや買い取らせについては、いまだ後を絶ちません。昨年も、4件の賞品買取事件について検挙報告を受けており、また、賞品の買い取らせに係る行政処分件数については、一昨年を大きく上回る状況となっております。このため、警察としては、いまだ複数の都道府県において、根強く賞品の買取り、買い取らせが行われているのではないかと推察しているところです。
 この買取り、買い取らせの規制は、現金提供の禁止や遊技機の規制と並んでぱちんこ営業の根幹に関わる規制の一つであり、一般の人から見て、ぱちんこ営業が賭博と一線を画す営業であることがはっきり分かるようにするために、遵守を徹底していただきたいと思います。
 2点目は、適切な賞品提供の徹底についてです。
 いわゆる一物一価は、風営法等に明記されている等価交換規制の下では当然のことです。これを自分の都合のよいように解釈して風営法に反する賞品提供を行う営業者が依然存在していることは非常に残念であり、全国で是正が徹底されたことを確認するまで指導取締りを続ける必要があると考えております。一昨年10月に、賞品提供の適正化について当庁から示した文書には、等価交換規制に抵触する賞品提供方法として三つの例を示しておりますが、不適切な賞品提供方法は他にも様々にありますことから、皆様には市場価格に基づく一物一価の下で、適切な賞品提供を行っていただきたいと思います。
 なお、賞品提供の現場においては、一物一価に反する賞品提供のほか、一般に日常生活の用に供すると考えられる物品が十分に取りそろえられていなかったり、その価格帯が社会通念に照らして余りに広く、市場性に強い疑問を持たざるを得ない賞品が置かれていたりする事例も見受けられます。さらに、賞品は「物品」、つまり有体物に限られているのですが、例えば、落語のデジタルデータや、サンタクロース派遣サービス、ミネラルウォーターの複数回購入権といった無体物を賞品として提供していた営業者も確認されており、それぞれ管轄の警察において是正指導を行っております。皆様には、風営法の関係条文を改めて御確認いただき、遊技の結果に対する健全なおまけとして、適切な賞品を適切に提供していただきたいと思います。

 次に、ぱちんこ業界が行われている社会的活動についてお話しします。
 全日遊連では、東日本大震災の被災地に向けた支援以外にも、全日遊連が中心となって設立された全日本社会貢献団体機構を通じるなどして、以前から、社会福祉を目的とした寄付や防犯活動、学術・文化活動への支援等の様々な形で社会貢献を続けてこられており、その業績に対し敬意を表したいと思います。こうした活動は、ぱちんこ業界のイメージアップと社会的地位の向上に大きくつながるものと考えております。
 また、現在、ぱちんこ業界における地球温暖化防止対策として、全日遊連が策定された「環境自主行動計画」に基づき、ホールの電気使用量を抑えるための取組が行われていると承知しております。先般、平成23年度におけるCO2排出量換算値について御報告をいただきましたが、前年度と比較して4.6%の減少であったと承知しており、各ホールにおいて電気使用量を抑えるために様々な努力をされていることを大変心強く感じています。
 東日本大震災に起因する電力需給のアンバランスは、いまだ十分に改善されていないところ、引き続き、皆様には、ぱちんこ営業における電力使用の在り方について、遊技機製造業者との連携の下で見直しを進め、省エネルギーを心掛けた営業形態を目指していただきたいと思います。

 次に、業界を挙げた遊技機の適正な管理の徹底についてお話しします。
 現在、全日遊連も参加されているセキュリティ対策委員会において、機歴管理の在り方について検討されていると承知しております。
 先般警察庁と福岡県警察が摘発したいわゆる「金スロ」と呼ばれる違法営業や「闇スロ」と呼ばれる賭博事件では、かつてぱちんこ営業所で使われていた遊技機が改造された上で、賭博に用いられていたところです。このような事件は、ぱちんこ営業者が行っているものではありませんが、かつてぱちんこ営業に使われていた遊技機が犯罪行為に使用されているということは事実であります。したがいまして、流通段階を含め、遊技機の適正な管理が確実に行われるよう、全日遊連を始めとする関係各団体が、それぞれ自らの立場で何ができるかを真剣に考え、具体的な成果に結び付けていただきたいと思います。

 最後に、もう一つだけお願いを申し上げます。既にパブリックコメント募集手続で公表しているところでありますが、風営法施行令と各都道府県の警察関係手数料条例を改正して、本年4月1日に、遊技機の認定及び検定、風俗営業の許可、遊技機の変更の承認等に係る手数料額の改定を行う予定です。この改定に伴ってぱちんこ営業者や遊技機製造業者に混乱が生じないよう、警察としても引き続き十分な広報を行う予定ですが、御列席の皆様におかれましても、組合員等に対して、周知徹底を図っていただきますようお願いいたします。

 ぱちんこ営業は、参加人口が減少したとは言え、なお1,260万人という非常に多くの方々が楽しんでいる代表的な大衆娯楽であります。ぱちんこ業界が目指すべき真の大衆娯楽というのは、国民に憩いと潤いを与えるためのものだと思います。その前提に立てば、ぱちんこ営業の基本は、過度に射幸性を追求する営業とは一線を画した誰にとっても身近で、手軽に、安く、安心して余暇を費やすことのできる健全な遊戯となることであり、それにより、地域社会に根付き、地域社会との絆をしっかりと構築することであると考えます。
 当庁からの指導や要請は、業界が風営法の規制を再確認し、遵守を徹底して、法に照らして非難を受けない健全な業態を確立していただきたいという観点によるものであります。その意味で、不適切な営業実態を慣習として既得権益のように考える違法営業者については、警察として、一切手を緩めることなく取締りを進めていくつもりです。当庁としては、業界が進めている健全化の取組を後押しするとともに、違法営業者にやり得をさせて、真面目に努力されている遵法営業者が損をするというようなことのないよう、遵法営業者同士による公正な競争環境の整備に努め、これにより善良の風俗を維持してまいりたいと考えております。
 全国のぱちんこ営業所の9割以上が所属する全日遊連は、その一挙手一投足が業界内外の注目を集める存在であり、それだけに、冒頭申し上げたように、今年が業界が健全化を強力に進めた年として長く歴史に残る年となるためには、皆様の御尽力に期待するところが大きいと思っています。皆様におかれては、一組合員に至るまで一致団結して定められたルールを遵守し、他のホール関係団体とも緊密に連携を取って、今後とも、国民が安心して手軽に遊べる健全な娯楽を提供し、ぱちんこが真の娯楽として広く国民に評価されるよう、健全化に向けた努力を推進されることを期待しております。

 結びに、貴連合会の益々の御発展と皆様方の御健勝、御多幸を祈念いたしまして、私の話を終わります。
 御静聴ありがとうございました。

(1月25日開催の全日遊連全国理事会にて)