岡田美術館 力戦形の第1局、里見女流名人の先勝でスタート

(株)ユニバーサルエンターテインメント(本社/東京都江東区)が特別協賛する女流名人戦、第45期「岡田美術館杯女流名人戦」5番勝負の第1局は1月20日、 岡田美術館(神奈川県箱根町)において開催。第1局は118手で伊藤沙恵女流二段が投了、里見香奈女流名人が10連覇に向け先勝した。女流名人戦は、女流棋士の誕生とともにスタートした最も古い歴史と伝統のあるタイトル戦。そして冠名を「岡田美術館杯」とした4回目の女流名人戦となった。

20日の対局当日、雨雲が覆う肌寒い箱根の朝、岡田美術館の日本庭園内にある開化亭の対局室では、小林忠館長(岡田美術館)の振り駒で、「と金」(裏返しの歩)3枚により、伊藤女流二段の先手で始まった。先手(伊藤二段)は飛車先の歩をつき居飛車を選択、後手(里見女流名人)は6手目に王の前に飛車を振って応じた。序盤は、黙々と駒組みが続いていたが、42手目に里見女流名人が中央で歩をぶつけて開戦。昼食休憩を挟む時間帯では、お互いにツバ迫り合い、長考が続いた。

午後からは岡田美術館・5階ホールにおいて、現地大盤解説会(解説者/福崎文吾九段、聞き手/鈴木環那女流二段、山口恵梨子女流二段、ゲストの香川愛生女流三段など)が開催し、全国各地から約60名の将棋ファンが参加した。清水市代女流六段(日本将棋連盟常務理事)、青野照市九段(立会人)など、大盤解説に出演して盛り上がりを見せた。大盤解説がはじまって約1時間ほど経った頃、里見女流名人は68手目に大駒・飛車を切って金銀に交換する2枚替えで踏み込み、相手陣に厳しく迫り、午後4時半過ぎ勝ちをつかんだ。大盤解説で立会人の青野九段からは、今多くの人が将棋に関心を寄せられている事に謝辞。対局室の熱気をもっとリアルに感じられる取り組みについてファンの気持ちに立った改革について意見を聴くなどが印象に残った。

対局後、大盤解説会場に登場した両対局者。特に里見女流名人は昨年末に階段で転び捻挫、松葉杖で登場した事から、「皆さんにはご迷惑をお掛けしてしまって。その分、集中して指す事ができました。早く治せるように努めたい」(里見女流名人)と挨拶。昨年に続き挑戦者となった伊藤女流二段は、「毎局、全力を尽くすだけなので、次局も集中して指せればと思います」と、挨拶していた。里見女流名人は、今タイトル戦で、前人未到の10連覇(V10)を目指す好発進となった。

開始直後の両対局者(後方、左より小林館長、丸山報知新聞社長、青野立会人、富士本社長、清水常務)

終局直後の対局室

大盤解説(左より香川女流三段、山口女流二段、鈴木女流二段、清水常務、青野立会人、福崎九段)

大盤解説に登場した両対局者