大商大 ギャンブル依存症について公開講座

大阪商業大学アミューズメント産業研究所(美原融所長)は6月17日、大阪府東大阪市の大阪商業大学・ユニバーシティホール蒼天において、第9回公開講座「どうする!?ギャンブル依存症!!〜産官学から見た対策とは〜」を開講した。IR実現する前提として、ギャンブル依存症について一般市民約150名が参加して、見識を深めた。

冒頭挨拶に立った松村政樹副所長(AM産業研究所)は、カジノを含むIR構想の法制化が進められている中、いわゆるギャンブル依存症(障害)に対して、一般では様々な憶測や先入観で受け止められている現状だとした。まずそのギャンブル障害を理解し、予防できるのか、万が一ギャンブル障害になった時、どうすればよいか、業界としてどういった対策がとられているか等、公開講座としたことを説明した。

「ギャンブル障害についての概要」と題して、野田龍也氏(奈良県立医科大学・公衆衛生学講師)が担当。続いて「依存症対策:臨床と行政の経験から」について野田千絵子氏(浜松医科大学・医師)。「ギャンブル産業から見たギャンブル障害への対策」について谷岡 一郎氏(大阪商業大学・学長)が担当。最後に「大学教育から見たギャンブル障害への対策」について木戸盛年氏(大阪商業大学経済学部・助教)が講演を進めた。その後、木戸氏をモデレーターに、野田両氏をパネリストとして「産官学」の視点から掘り下げた。

木戸氏は、「ギャンブル依存症」を研究テーマとして調べたけれども、当初から言葉自体があいまいであり、研究も進んでいないのが現実であり、医学界では「鬼子」として誰も扱おうとしていないように感じたとして、だんだん意識が高まり、広がるような傾向になっているのかを問題提起。野田講師は「テレビ、ファミコンの登場で、大ブームとなり、その依存状態が社会問題化した時代がある。テレビ依存、ファミコン依存は今も生き残っているだろうか。私は生き残ってはいないと思う。それは病気でなかった。社会問題で盛り上がっても、生き残れない依存だった。今インターネットを研究しているけれども、インターネットも生き残れないように思う。そういう事だと、研究者は依存を一 生の研 究テーマに選ばない。そんな浮つき者に飛びつくのは危険、テレビ依存の研究者になり、10年後に無くなっているようなテーマでは研究者として生きられない」と、研究者・医師として、研究が進まない理由としていた。また、依存症は、予防することが8〜9割と重要。しかし、医者は予防よりも治療がメイン。今、予防という概念が強くなっていることから、今後は予防が主流となり増えていくだろうと、そうした研究者の増加が期待できるとした。

野田医師は「様々な依存症があるが、たとえば、人はそれぞれに生き辛さを抱えているものです。無意識のうちに、自分の抱える困難や苦痛を一時的に緩和する役立つ行動(物質)を選択し、生き延びようとすることが考えられる(「自己治療仮説」)」という。

最後に、ギャンブル依存症は、社会問題として盛り上がっているけれど、学問や研究の背景がない。しかし、社会問題としてはどんどん盛り上がって、声の大きいだけの人が目立っている。ギャンブルを叩くのではなく、根本にある問題(生き辛さを抱えている人)を見つめられ、手当していく環境づくりにつながる取り組みが大切とした。